立坑の工事に従事している方は測量のために、立坑下に基準点・ポイントを出さないといけないことがありますよね。
トータルステーションは上を見るのは得意でも、下を見るのは苦手な機械です。
望遠鏡の部分を下におろしていくと、器械本体の操作盤に当たってしまって視準することができません。
立坑の中心を出す方法を考えてやってみろ。という指示があり自分なりに考えて下げ振りを使うことを思いつきました。
この方法で良いか上司に確認したところ、俺はこの方法ではやらない。と言うだけで教えてくれなかったんです。
仕方なく下げふりを20数mぶら下げて立坑のセンターを出しました。めちゃくちゃ誤差があったと思います。
別の先輩が手元をやってくれたのですが、何も言わずに手元をやってくれました。方法を知らなかったのか、僕のやり方に思うところがありながらも手伝ってくれたのかはわかりません。
もっと良い測量の仕方を知ったのはその数年後です。
と言うわけで、今回は立坑下に基準点を出す方法を2種類ご紹介します。
下げ振りではなく、水糸を使います。
立坑内に基準点を設置する方法(その1)
地上部に水糸を張ってセンターを出す

円形の立坑があるとします(図の黄色い円)。
地上部でセンターを出すための測量を済ませてしまいます。
図のように地上部に4点センターの逃げ杭を打って、水糸を張ります。
これで水糸の交点が立坑の中心ですね。
あとはこれをトータルステーションを使って、立坑下に垂直に落とすだけです。
昇降設備とかがある場合はこんな杭の打ち方でも良いと思います。

立坑下に出したい点の交点を作ってしまえば良いので、こういう方法もありだと思います。

立坑の下に器械を据えて、基準点を落とす

水糸の交点の真下に器械を据えます。やり方を説明します。
① 水糸の交点と思われる場所に器械を設置し、器械の持ち手を外し、アイピースを取り付ける。
② 整準ネジで器械を水平にする。
③ 望遠鏡を鉛直角0度0分0秒にする。
④ アイピースを使用して望遠鏡を覗き、水糸の交点の位置を確認する。
⑤ 三脚の脚を伸縮させ、器械を水糸の交点側に移動させる。
⑥ 再度、器械を整準ネジで水平にし、望遠鏡を鉛直角0度0分0秒にする。
⑦ 望遠鏡を覗き、水糸の交点の位置を確認する。(⑤〜⑦を繰り返す)
⑧ 最後に器械の水平と、器械の位置を三脚の天板上で微調整して、水糸の交点と器械の位置を一致させる。
⑨ 求心望遠鏡を覗いて、手元の人に釘なり墨なり打ってもらう。
普段やる器械の据え方と手順が違うのは、求心望遠鏡を覗く代わりに、望遠鏡を鉛直にして上を確認するだけです。
これがトータルステーションを鉛直・水平にして、真下にポイントを落とす方法です。
この方法は立坑上に4点の杭を打つので、地上部の立坑の周囲にそれなりにスペースがないとできない方法ですね。
次に紹介する方法は、水糸1本でやる方法です。ただし、土留め支保工のようなものがないとできません。
立坑内に基準点を設置する方法(その2)
地上部に水糸を張る

直径10mの円形の立坑があるとします(図の黄色い円)。
地上部で2点の杭を打ちます。
仮に杭は立坑の中心から6mの場所に設置したとします。
円形でも矩形の立坑でも、センターライン上に杭を打つのがおすすめです。
水糸を張ればそのままセンターラインが出ます。
立坑内の土留支保工などに距離を持たせる
深い立坑には土留支保工などあると思いますので、
立坑上の釘・鋲に器械を据えて、センターライン上の土留支保工を視準します。
ここで印をするとともに、距離を持たせます。

仮にその距離aを10.5mとします。
立坑下に器械を据えて、基準点を出す。
ここのやり方はその1と同じです。
異なるのは水糸の交点ではなく、水糸に合わせるわけです。
水糸の真下に合わせるだけなので、こちらは多少楽だと思います。

① 水糸の交点と思われる場所に器械を設置し、器械の持ち手を外し、アイピースを取り付ける。
② 整準ネジで器械を水平にする。
③ 望遠鏡を鉛直角0度0分0秒にする。
④ アイピースを使用して望遠鏡を覗き、水糸の位置を確認する。
⑤ 三脚の脚を伸縮させ、器械を水糸側に移動させる。
⑥ 再度、器械を整準ネジで水平にし、望遠鏡を鉛直角0度0分0秒にする。
⑦ 望遠鏡を覗き、水糸の位置を確認する。(⑤〜⑦を繰り返す)
⑧ 最後に器械の水平と、器械の位置を三脚の天板上で微調整して、水糸と器械の位置を一致させる。
⑨ 求心望遠鏡を覗いて、手元の人に釘なり墨なり打ってもらう。
⑩ 土留支保工の印を望遠鏡で視準し、距離bを確認する。
水糸の真下に器械を設置できたら、地上部から印をした土留支保工の点を視準してください。
仮にこの距離bを7mとします。
土留支保工の点を視準したら、望遠鏡を覗きながらどんどん鉛直角を0度に近づけていってください。
望遠鏡の十字線(スタジアヘア)が水糸とずっと一致しているようであれば、しっかり据わっています。
少しでもズレがあるようであれば、どこかがずれているので、再度確認が必要です。
最悪の場合、もう一度地上部に器械を据えて、土留支保工の点を確認し直さなければならない場合もあります。
立坑の上に水糸なんか張れないよ。と言う方は、土留支保工上に水糸を張っても良いかもしれませんね。
器械を据えた位置の計算
その1では交点自体が座標を持っていますので、器械を据えた位置を計算する必要はありませんでした。
その2のやり方では、器械をセンターライン上の「どこか」に据えているので、器械の位置を計算します。
と言っても簡単な足し算引き算です。
立坑の中心からどれだけ離れているかを計算します。
条件は、立坑の直径10m、半径5m、地上部の杭は中心から6m、杭から土留支保工までは10.5m、立坑下の器械から土留支保工までは7m。
立坑センターから土留支保工までは 10.5 ー 6 = 4.5m
器械の位置は立坑センターから 7 ー 4.5 = 2.5m
ですね。これで器械の位置が求まりました。
まとめ
普通の現場にあるトータルステーションでやろうとすると、こんな手順になります。
測量屋さんならもっと良い方法を知っていたり、別の鉛直器などのを持っているかもしれません。
工事によって求められる精度が違いますので、より高い精度が必要であればいつもお世話になっている測量やさんや専門業者さんに聞いてみてください。
土木現場であれば今回紹介したやり方で、だいたいカバーできると思います。
では。
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