建設業は人手不足である。建設業は労働時間が長い。という話は皆さんも聞いたことがあると思います。
国はさまざまな取り組みによって建設業の労働生産性向上を目指しています。
この記事は
- 生産性向上って聞くけど、実際に休みが増えたりするの?
- ゼネコンって給料が高くて興味あるけど、残業多いって聞くし、、
- 休みが少ないなら、ゼネコンは辞めておこうかな。。
- 建設業界の職場環境が良くなるなら、ゼネコンで働いてみたい。
という、建設業界やゼネコンに興味がある方に向けて書いております。
今回は、建設業の労働生産性向上というキーワードから、今後の現場監督(施工管理)の働き方がどのように変わる可能性があるのかを紹介していこうと思います。
建設業界で働く人やこれから働こうとしている人にとって、今後の建設業界がどこを目指しているかは、自分の働き方や待遇に直結しますので、この機に考えてみるのも良いでしょう。
結論としては、
生産性向上の取り組みでは現場監督の休みや残業が減るということはあまりないのかなと思います。
では、説明していきます。
生産性向上の取り組み
政府が生産性向上を目指すプロジェクトの一つに、i-Constructionというものがあります。
国土交通省の政策の関するページには、以下のようにi-Constructionの目標・目指す先が書かれています。
- 一人一人の生産性を向上させ、企業の経営環境を改善
- 建設現場に携わる人の賃金の水準の向上を図るなど、魅力ある建設現場へ
- 建設現場での死亡事故ゼロに
- 「きつい・危険・きたない」から「給与・休暇・希望」を目指して
この文言を見るに、今後の建設業はより良い方向へ向かっていこうと努力している最中だということがわかります。
生産性に向上によって、賃金を向上さて、新3Kと呼ばれる「給与・休暇・希望」を目指す。
「給与・休暇・希望」は新3Kと呼ばれるものです。
新3Kには「休暇」も入っています。
果たして現場監督も休めるようになるのでしょか。
生産性向上とは
i-Constructionの取り組みで一番力を入れているのが「ICT」です。
ICTとは、国交省の説明の中に
パソコンやスマホなどデジタル機器の中で動作するソフトウェアおよび情報をデジタル化して送受信する通信ネットエアークや情報システムの総称。
と書いてあります。
少しわかりにくいので、実際にICTによって具体的にどうなるか、どのように生産性が向上するか、国交相が示している例を3つ紹介します。
少人数で以前と同等な施工量を確保
人手不足の状況の中で、以前と同じ仕事量、施工量を少人数でできるようにしようということです。
「今までよりも短い工期で」などとも書いてあります。
すなわち、1日の仕事量は変わらないか、それよりも増える可能性があるということです。
これは、現場の作業員ではなく、その作業員が所属する協力会社にメリットがあります。
作業員を今まで以上に確保する必要がなくなるんですね。
検査にかかる人手や、時間の縮減
今まで発注者の出来形検査などは、職員皆で対応する必要がありました。
発注者の人も暇ではないですから、担当者が来たらすぐ検査に入れるように
担当者が来所する前に現場へ行き、どこをどう測るか職員どうしで打ち合わせ、テープやリボンや黒板、あるいは測量器械も段取りする必要がありました。
立ち会いの際も、テープの端端を押さえる人、黒板を持つ人、写真を撮る人など3人4人は必要でした。
人数が足りない時は、作業員にテープを持っててもらったりと、総出で対応します。
確かに、3Dスキャナや3次元の測量データを使用すれば時間短縮や、人員の削減にはつながる可能性はありそうです。
施工数量算出をより正確に素早く
3次元の測量データを使って現況の測量をして、3次元の設計図面と重ね合わせて、その差分を掘削や盛土の施工数量として計算する手法です。
今までは、図面は2次元のものしかありませんでした。
二次元の平面図、横断図、縦断図を駆使して、複雑な地形の掘削土量や埋戻しのボリュームを「平均断面法」などを利用して計算していました。
やはりこれはある程度の数量は求められるのですが、正確ではありませんでした。
ある断面とある断面の断面積の平均に、断面間の距離を掛ける方法なのですが
計算に使用する断面と断面の間の凸凹は無視されます。なので正確ではないのです。
しかし、現場監督は計算の専門家ではないので、普通の人でもできる最善の方法はこれしかないんです。
それを改善できるのはとても素晴らしいことだと思います。
しかし現在のところ導入できそうなのは、土工事や河川の浚渫工事くらいですかね。
現場監督の働き方は
作業員の人数が減っても
現場の作業員が減っても、施工量が変わらないならば、それを段取りする現場監督の忙しさは変わりません。
日施工量が上がれば、工期短縮ができるなどとも書かれていますので、工期が短くなるということは、現場監督はより忙しいということになります。
機械の自動化などで、監督が現場に出る必要が減る可能性はありますが、
その機械を使用するためには衛星測位システムを利用したり、その機械を精度良く動かせるよう維持管理しなければならないので、もしかしたら今までよりも段取りが増える可能性まであるでしょう。
検査にかかる人手が減っても
検査にかかる人手が減りそうなのは大変喜ばしいことです。
しかし、三次元測量の出来形測量を行うには、精度を確保しなければなりません。
精度確保のために、基準点の確認から行う必要があるかもしれません。
そうすると今までは現地を直接測って終わりだったのが、測量から始める必要が出てきます。
そもそもGNSSなどの衛星測位システムは、トータルステーションで計測するよりも2〜3倍の誤差がでます。
さらに、土工事というのは機械で作業を行うので、実際施工精度というのはあまり良くありません。5cmくらいは普通に誤差があります。
測量精度が悪い3次元測量に、施工精度があまり良くない土工事。相性が悪そうですね。
計測してみたら、規格値オーバー。ということが頻発しそうです。
そうすると、現地に行ってテープやレベルで直接測って確認してこい。などと上司に言われます。
結局最後は、テープとレベルで直接測ることになります。二度手間ですね。
今までは正直なところ、規格値に合わなそうな怪しいところは計測せず、規格値内に適合している都合の良い箇所を選んで検査をしていることもありました。
三次元で全て計測されてしまうと、不適合がたくさん見つかり、やり直しばかりになりそうです。
ちょっとした石の出っ張りなども計測されて、規格値より標高が高いなんて言われたら、たまったもんじゃありません。
人が直接測れば、ここは石があるから、少しずらして計測しよう。ということが臨機応変にできましたが、三次元測量は融通が効きそうにもありません。
施工数量算出するためには
施工前の3次元測量データを作成して、設計図を3次元化して施工数量を算出する。
これは仕事を受注する前なので、発注者かコンサルの仕事ですね。
では施工中に図面が変わったらどうしましょう。
こういう理由で、施工の都合上このような形にした方が良いですよ。施工の段階で一度このような形にした方が良いですよ。と発注者に提案することがあります。
そうすると施工数量の変更がでてきます。
その時の変更数量の計算は誰がやるのでしょう。
変更後の図面は、「このようにした方が良いですよ。」と提案する現場監督が描いていますよね。図面を持っているのは現場監督です。
現場監督自身が数量の計算をしなければなりませんね。
このように形が変わるので、数量もこのくらい変わります。よろしいでしょうか。と発注者にお伺いを立てるのが筋です。
元の設計図が3次元のデータであれば、現場監督も3次元の図面を作成して数量を計算しなければいけなさそうです。
3次元の図面を作成する手間も増えますね。
まとめ
ICTひとつ取っても、以上のように克服する課題がたくさんあります。
機械や測量精度など現場に適合するようになるには、まだ時間がかかりそうなのでしばらくは今までの働き方が続きそうです。
そもそも、昔と比べて今の建設機械や、測量器械、図面だって手書きからCADになってレベルアップして便利になっているはずです。
なのに、なぜ現場監督は忙しいままなのでしょう。
ムダを排除するからですね。
昔と比べて楽になったからと言って、そのままの働き方を継続させないですよね。
空いた時間に別の仕事を詰め込まれて、余裕があるなら人員を減らして無駄を削減します。
現場監督だって、作業員を現場で遊ばせるようなことはしないですよね。
会社だって同じです。自分とこの社員を現場で遊ばせないように管理しますよね。
現場監督に休みが増えるとしたら、生産性向上ではなくより直接的な、週休2日の取り組みを応援した方がよさそうです。
では。
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