働き方改革で建設業はどうなるの?
長時間労働が話題にのぼりがちな建設業界にも働き方改革の波が訪れています。
働き方改革によって建設業界はどのようになっていくのでしょうか。
「働き方改革」という言葉は耳障りの良い言葉ですよね。安直に捉えると
- 休みが増えるんだ
- 残業が減るんだ
と考えてしまいがちです。
建設業に入ろうとしている人も今現在建設業で働いている人も、これで働き方が変わるなら
- 建設業で働いてみようかな
- もう少し建設業で頑張ってみようかな
と思ってしまう人も少なくないと思います。それも意図して国もやっているのでしょうが。
ただ私は働き方改革で建設業、特に施工管理現場監督で働く人はそれほど良い働き方になるとは思いません。実際にゼネコンに7年勤務した経験から考えてみます。タイトルにある通り
さらに割に合わない職種になる可能性が高いです
そう思う理由を説明していきます。
そもそも働き方改革って
他産業と比較し休日出勤も含め労働時間が長くなっており、次世代を担う若手(29歳未満)が10%程度しかいない。さらに他産業と比較し給与も低いという建設業の問題点があります。
そのような状況ではどんどん建設業を目指す若者が減り、担い手が減ることでさらに建設業の一人当たりの負担が増え、ますます長時間労働になってしまいます。新たな入職者も減ってしまうばかりか、更なる離職者が出てしまう恐れもあります。
そのような問題点を改善し建設業で働くことの魅力をアップさせるために、国主導で建設業の改革に乗り出しました。それが「働き方改革」です。
その政府の策定する「建設業の働き方改革加速化プログラム」の中では、以下の3つを主軸に据えています。(出典:国土交通省)
- 長時間労働の是正
- 給与・社会保険
- 生産性向上
ここでようやく出てきました。働き方改革の中に「長時間労働の是正」という項目があります。
長時間労働の是正とは
「週休2日」を推進しましょう。さらに時間外労働時間に上限を設けます。ということです。
建設業では隔週土曜が休みの「4週6休」や、休みは日曜のみなどといった「4週4休」なんてことが普通となっている業界です。
国の管轄する工事から順次「週休2日制」を導入し、強制的に休みを取得させようとしています。
とは言っても週休2日なので単純計算で年間休日が104日程度となります。一般的なサラリーマンと比較するとそれでも休みは少ないと感じますね。。
さらに時間外労働時間にも上限を設け、
原則「月45時間」「年間360時間」までとする。
特別な事例が認められても
- 年間720時間以内
- ひと月に100時間を超えてはならない
- 2〜6ヶ月平均は80時間未満とし
- 45時間を超過して良いのは6ヶ月まで
この時間外労働の上限は建設業に2024年から導入されるのはもう決定事項です(出典:国土交通省)。
「週休2日制」導入するにはいくつも課題がありますし、現場作業員と現場監督側でも変わり方に違いが出てきますが、
もし週休2日制が導入され、時間外労働時間の上限が設定されたら現場監督はどうなるのか。という向きで話を進めていきたいと思います。
さらに割に合わなくなる現場監督
見た目だけの残業時間減
時間外労働時間の上限設定のため、会社はそれ以上社員に働かせることができなくなります。会社は月45時間までしか時間外を認めなくなります。
しかし、これは見た目上の数字だけです。
現状建設業の働き方というのは未だ大きくは変わってはおりません。生産性向上としてICTなどといったi-Constructionが導入されつつありますが、盛土切土などの土工事から導入している段階で、ICT建機の精度の問題もあり、土工事ですら完全に働き方が変わっているわけでもありません。ましてや他の工種などはどのように落とし込めばよいか思案している状況です。
そのような状況の中、時間外労働に上限を設けたところで業務の効率化が進んでいるわけではないので
サービス残業やステルス出勤などが増える
ことは火を見るよりも明らかです。
会社も現場も「工事を進める」ことが大前提です。
今この状況でも日曜に隠れて出勤して、図面書いたり書類作成したりしている人はいます。隠れて土日も出てこないと仕事が進まないからです。
上限が厳しくなろうと業務量は変わらないわけです。時間内に終わらないことは、時間外にやるしかありません。残業するしかありません。現場監督の自己判断でステルス出勤をする人もいるでしょう。
時間外の上限があるため、会社はそれを残業と認めません。認めてしまえば会社が違法に長時間残業させていることになり、罰則の対象となってしまうからです。現場監督本人が自己都合で残業・出勤している。ということにします。それがサービス残業・ステルス出勤です。
残業代の減少
今までは月に80時間や60時間まで時間外の申請が認められているところが多かったと思います。
実はもっとやっている。という人もいるとは思いますが、残業代として支払われるのはだいたい80時間や60時間分というところが多いように感じます。
それが今度は時間外労働の上限規制ということで、単純計算で月に40時間までしか認められなくなります。
そうなると上で話したように、時間外の上限が厳しくなってサビ残が増えるとともに、
実際に支払われる残業代も減ります
残業代を支払うということは、その分の時間外労働を認めるということになるからです。
なので、実際に80時間やろうが100時間やろうが支払われるのは40時間のみ。40時間しか会社として時間外労働として認めない。ということになります。
むしろ現場監督になった人は、残業が多くても高い年収を稼ぎたいという理由の人も多いはずです。
現場監督から時間外手当を奪ってしまったら残るのは低い基本給しかありません。
地方で週休2日ではやることない
基本的には見知らぬ土地で働くことが多いです。
現場監督というのは全国的に手がけているような会社であれば、案件がある場所に職員を派遣するので基本的に転勤族が多いと思います。
家族から離れて単身赴任していたり、独身者でも必ずしも自分の生まれ故郷で働いているとは限りません。生まれて初めて来た県で働いているという人も大勢いますよね。
宿舎も現場宿舎と呼ばれる仮設プレパブに住んでいる人もいますし、借上げアパートの人もいるでしょう。
そんな状況で週休2日にされて困りませんか?
家族がいる単身赴任者は毎週家に帰れるチャンスを手に入れるということですが、実際金銭的にはそんなに毎週帰れませんよね。
月に1〜2回の帰省費用だとか、盆正月の長期休暇の帰省費用の面倒を見てくれる会社はあるかもしれませんが、月に4回も移動費出る会社なんてあんまりないですよね。
独身者もそうです。
土日休みだから好きにしていいって言われても、見知らぬ土地です。やるとしてもゴルフ、釣り、スナックで酒飲みくらいでしょう。
土木施工管理なんかは山奥や海沿いなどの僻地に働きに来ているわけですから、毎週土日休みにされても困る人もいると思います。4週6休のように適度に土曜出勤して稼ぎたい人もいるかもしれません。
まとめ
長時間労働の是正によって現場監督は余計に割に合わない仕事になると思う理由を述べました。
課題はたくさんありますが2024年には時間外労働の上限規制が始まりますので、それには従わなくてはならなくなります。
それによって更なるサビ残やステルス出勤などはどうしても避けられないものだと考えます。
そもそも現場監督の年収が高いのは時間外手当によるものが大きいです。年収が高いから現場監督を我慢してやっている人も少なからずいるはずです。
その時間外手当が少なくなってしまうということは、見知らぬ僻地で汚い現場で我慢してわざわざ現場監督をやろう。なんて人は少なくなってしまうように感じます。自分はやめる際にそのような思いを持っておりました。
こちらでは生産性向上についても見解を述べています。よろしければ見てみてください。
では。
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